2010年9月21日

TSAのAFSP

米語は、略号が多くて慣れない人間にとっては混乱しそうになりますが、これは、(国土安全省の)運輸保安庁の外国人パイロットトレーニングプログラムのことです。

米国市民以外の外国人は、ここでの登録・承認手続きが終わるまでは、一切のフライトトレーニングを受ける事は出来ないとされています。(先日の体験搭乗では、思いっきり操縦竿を持たせてくれましたが、あれは良いのでしょうか)

9月16日の投稿で書いたように、15日に申請しました。それから5日、いつ承諾が出るのかと心待ちにしています。申請プロセスの進行状況は、Web上で確認する事が出来ます。

最初のステップは、スクールによる承諾で、「waiting for provider's acceptance」という表示になります。16日には、待ち切れず、スクールに「昨日AFSPに申し込んだからよろしく」というメールを出し、その成果か翌17日には、スクールが承諾しましたというメッセージと、プロセス費用($130)を支払うようにとのメールが届きました。この支払いもweb上でクレジットカードで支払う事が出来て、とても便利です。

その後、記入した情報、アップロードしてあるパスポートやVISA、運転免許などのデータが審査され、問題が無ければ、指紋採取のステップに進めるはずです。アメリカの事務手続きの迅速でなさには定評がありますので、このステップがいつ終わるのか、首を長くして待つ事になりそうです。ただ、申請内容(情報やデータ)に誤りなどがあった場合は、最初のステップに戻ってしまう(プロセス費用は再度支払う必要はない)そうで、さらに時間がかかることになるので、そうならない事も祈っています。

審査のステップが終わって指紋採取し、そのデータがTSAに届いた時点で「プロセス完了」の連絡が届き、訓練開始となります。AFSPのページの説明書きやFAQを読み込むうちに、だいぶこのプロセスに詳しくなってしまいました。

2010年9月16日

事前準備

アメリカに来て、もしかしてもしかするとパイロットライセンスが取れるかもしれないと思い立ってから、自分なりに準備をしてきました。具体的には、本を買って読み込んでいました。まず最初に買ったのは、たまたま本屋で目についたwritten testの問題集です。

Private Pilot Test Prep 2010

この本を読んで筆記試験の勉強を自分で(勝手に)したのですが、本の中に、Prepwareというサイトで、オンライン試験の練習が出来ること、またこの練習で80%以上の正解率を2回以上達成すると、筆記試験を受けるために必要な教官のEndorsement(裏書き)をこの本の出版元のASA社からもらえるというものを見つけました。この練習試験、$14.95で有料ですが、デモのページでも試験時間(2.5時間)が制限(デモは1時間)されている以外は、普通に練習できます。なので、デモで何回か練習し、大丈夫と思ったところで有料サービスを購入して、Endorsementを発行してもらうのが良いと思います。なお、購入すると5回、試験を受けることが出来ます。

さらに、試験で必要となるフライトコンピュータ(計算尺)、チャート用プロッター(物差し)等をASA社の通販サイトから購入し、試験の準備を整えました。

その他、アメリカでプライベートパイロットを取得した人のブログ、教官を経験していた人のページ等様々なものを細かくチェックし、自分なりのトレーニングのイメージを(勝手に)積み上げて行きました。また、これらのページで出ていた本はAmazon.comで購入し、読み進めたりもしました。

このように、実際に行動する以外の準備は順調に進めていたのですが、実際の行動力が無いこと、一応これでも普段は仕事を(も)しているので、実際のスクール探し、訪問までには随分と時間がかかりました。また何よりは、家族の反対があり、それを黙殺まで改善させるまで時間がかかりました。

ちなみに、筆記試験はいつでも受ける事が出来たのですが、基本的に平日のビジネスアワーのみに受験出来る会場が多いことなどから、いまだに受けていません。しばらく勉強していないので、ずいぶんと忘れてしまっている気もします。フライトトレーニングの開始前か直後くらいには、ぜひ受験しておきたいと思っています。

AFSPに登録する

現在、アメリカで外国人がフライトトレーニングを受けるには、国土安全保障省(Department of Homeland Security)でAlien Flight Student Program(AFSP) の申請を行い、認められる必要があります。これは、9・11の実行犯達が米国内でのトレーニングを受けていたことによるもののようです。

こんな物々しい申請ですが、ネットで出来てしまうのはさすがアメリカといった感じがします。基本的には、
  1. 基本情報(氏名、生年月日、体格等)
  2. 別名情報(別名を持っているかどうか)
  3. 国籍・市民権情報
  4. ID情報(パスポート等のID)
  5. 住所情報
  6. 雇用情報
を入力し、その上でフライトスクール及びトレーニングの情報を入力して申請します。必要な書類も、スキャンしたデータをアップロードすれば良いので、(スキャナを持っていれば)とても楽です。書類はFAXでの送信も可能だそうです。上記の内4についてが一番手間がかかりそうですが、必要なものは、
  • Airmens Certificate
  • Driver's License
  • Passport
  • Visa
  • Lawful Permanent Resident Card
の中から、所持しているものを入力、スキャンしてアップロードすれば良い仕組みです。どれだけ入力すれば良いかですが、基本的には1つ以上で良いようです。ただし、入力内容(こちらの情報)が多いほど審査がやりやすいと思いますので、私は、持っているものは出来るだけ入力するようにしました。


問題は、スクールの情報なのですが、学校を選択する他に、スクールでのStudent ID、Course ID、訓練開始・終了予定年月日、使用予定航空機タイプなどを入力する欄があることです。これについてフライトスクールに電話で確認すると、Student IDは自分の名前か空欄のままで、Course IDはスクール名を、そのまま記入してとの事でした。それなりの学生番号、コース番号があるかと思っていたので拍子抜けしました。これもまたいい加減というか、なんというか。訓練期間や航空機タイプは聞き忘れてしまったのですが、どうせいい加減そうな気がするので、勝手に自分で設定しておきました。

登録自体は、すべて含めても2,3時間もあれば終わるのではないでしょうか。私の場合は、スクール以外の情報は事前に入れておき、今日になってスクールの情報を入れました。

この申請がなされると、まずスクールに確認が行き、スクールがApprovalを出すと、次に申請費用($130もします)の払い込みと指紋採取の手続き、それらが完了すると最終的に許可が出るそうです。早くて1週間、遅いと1ヶ月近くかかるそうで、これなら、スクールに入学を決心した時点(2週間ほど前)に申請しておくのだったと、後悔しています。この登録が完了するまでは、一切のトレーニングは不可だそうで(教官との訓練は大丈夫と思っていました)、実際の訓練までは、いましばらく時間がかかりそうです。このプロセスが早く進みますように。

FAA Class3 Medical Certificate

本日、健康診断を受け、無事にClass3のメディカル・サーティフィケートを取得しました。

最初は、 フライトスクールの勧める医師の所で受けようと思ったのですが、電話でアポイントメントを取ろうとすると、もうやっていないとの事。どうやらメディカル・サーティフィケートの診断をしなくなってしまったようです。FAAの指定医師一覧にも載っているのに。ということで、FAAの一覧から探し直します。何となくですが、個人の開業医の方が良いような気がして、こちらの先生に決定しました。

昨日アポイントを取ると、翌日(今日)の午後1時半から空いているとの事。ちょうどその直前に、近くに行く用事があったので、絶妙のタイミングという事で即予約しました。ちなみに、健康診断は、日常英会話力の確認も含まれており、また、Medical CertificateはStudent PilotのCertificateも含まれています。つまり、健康診断と英語力テストに合格すれば、その時点でStudent Pilotになれるという訳です。
病院は、日本の開業医と同じような感じ。入口すぐに待合室、受付があり、本棚には本が、ソファの前のテーブルには雑誌や新聞が並べてあります。受付で、「予約をしている者ですが」というと、問診票のようなものを渡されて記入するように指示されました。これがClass3のCertificateの申込用紙であり、その一部(厚紙になっています)を切り取るとそのままCertificate本体になる仕組みでした。

住所や職業、勤務先、既往症や飛行中のコンタクトの使用歴、飛行時間(当然0時間ですが)などを記入し(実際は書き損じをしてしまい全て書き直したりしました)、しばらく待つと診察室へ。ここも日本の中規模開業医と同様に、いくつかの部屋(施術室、診察室等)に分かれていました。

はじめに、看護婦さん(私服)が、廊下わきの体重計と身長計で測定をした後、診察室で機会を使っての視力、色盲のチェック。体重計や身長計には服はそのまま、靴も脱がずに測定(おかげで180cmを超えました)、視力も、機械で表示された文字の中で、どこまで細かい字が読めるかと聞くという大雑把なもので、全部読めるというとOKという感じでとても大雑把な印象。

その後、ベッドに座ってシャツを脱いで待っていて、という事で待っていると、お医者さんが登場。60過ぎの長身細身の先生ですが、アロハのような派手な色遣いのシャツを着ており、陽気に握手。耳の中、喉、心音、肺音、首周りのリンパ等を手早く確認すると、握手を求めてきました。これで終わりだよ、との事で合格のようです。英会話については、殆どなかったのですが、診察を無事に受ける英語力(手を挙げて、舌を出して、受付に戻っていいよ、等が理解できた?)があったので、良かったという事なのか。

待合室に戻ると、受付の人がタイプライターで問診票に書き込み、Certificateを切り取って渡してくれました。あっけないくらい簡単でした。料金は$95なり。

ちなみに、近くにメディカル・サーティフィケートのテストをディスカウント($55)している医院も発見してしまったのですが、2週間前までに予約した場合にのみ割引だったので、行くのはやめにしました。時間があれば、良いかもしれません。

フライトスクールに申込を決意する

フライトスクールで体験搭乗をし、怖いを思いをしながらも、まあ思いきれば出来ない事はない、と極めて根拠のない楽天的な判断をして、フライトスクールに申し込みをすることを決意しました。体験搭乗の後に申込用紙をもらい、その場で書いて提出してもいいよとの事でしたが、やはり一度は見直さないとという事で、持ち帰り、1週間ほどたって提出しに行きました。ただし、フライトスクールでのレッスンが受けられるようになるまでには、次のプロセスを経る必要があります。

  1. FAA指定医師のところで、Class3の健康診断(Medical Certificate)を受ける
  2. TSAのAlien Flight Student Program(AFSP)で、外国人フライトトレーニングの承認を受ける
これが出来るまでは、トレーニングを受けられる確証が無いので、決済のプロセスはまっておいて欲しいとお願いしつつ、書類を提出しました。

まずは、 健康診断ですが、これはCertificationを取得する以前でも、教官との訓練は可能だそうです。ただし、訓練費用を払い込んだ後で、健康診断に落ちてしまったら困りますので、事前に受けることにしました。いろいろな免許を取得した人のページを見ると、肛門まで検査云々と恐ろしい話が書いてあるので、フライトスクールでお勧めのお医者さんを紹介してくれとお願いしました。紹介はしてくれましたが、単にスクールに一番近いスクールを紹介してくれただけでした。というよりも、この町では、その医師しかFAA指定医師がいないので、そもそも選択肢が無かったようです。

この検査については別稿で書きたいと思いますが、無事にCertificationをもらって、いざ電話をすると、次はTSAの承認を受けるまでは訓練が出来ないので、それまでは決済はしないでおきます、との事。こういう話をシステマティックに最初にまとめて話してくれず、ポロポロ出てくるのはアメリカ的というか、何というか。毎回電話や窓口の担当者が違うので、その度に状況を話さなくてはいけません。という事で、実際の訓練開始までは、もうしばらくかかりそうです。

免許取得を思い立つに至る理由

パイロットのライセンスを取るというと、皆さんカッコ良い理由があると思うのですが、私の場合は特にありません。昔から飛行機は好きで、将来はパイロットと漠然と思っていた頃もありました。でも、高校の頃勉強のやりすぎ(ウソです)でみるみる視力が低下し、無理だろうとあきらめていました。

ふとしたきっかけで 、アメリカに赴任した時に、悪魔のささやきのようにかつての夢を思い出しました。こっちって飛行機の免許が自動車みたいに取れるみたいだし(間違いだと思います)、やってみようかということで、近くのフライトスクールを探し、メールで質問を送ってみたりしました。どこも、なかなか返事が来ない、その返事もとてもぶっきら棒な感じだったりしているところが共通していました。見学に行きたいのですが、とさらにメールを送ると、営業時間を書いて来て、その間に連絡して尋ねて来て、とのこと。あまりに商売気がないなあと思いながら、仕事の合間を見つけて2つほどのスクールに見学に行きました。もう1か所、日本人がオーナーのスクールが近くにあり、そこの前身のスクールで免許を取られたTakeoff Runway26さんから情報をいただきました。しかし、なかなか連絡(留守番電話だったりで)がつかず、また、自宅から若干遠い事もあって、残念ながら選択から外すこととしました。

その上で、質問により細かく応えてくれ、また商売気が多少ありそうで、ネットで予約もできるというフライトスクールに決めるつもりで、現在申し込み手続き中です。この申し込み手続きについては、別の投稿で書きたいと思っています。

スタートは体験搭乗

9月4日(土)にフライトスクールに出かけてきました。実は、その以前も別のスクールに出かけて話を聞いてきました。基本的な情報はホームページ等で入手できるのですが、どうもフライトスクールというのは、ホームページの充実にはあまり力を入れていないようです。また、どこも基本的なシステムとして、飛行機のレンタル、教官の時間当たり価格から、訓練費用が決定されます。つまりは、飛行機をレンタルして教官をレンタル(ブッキング)して、その費用を支払うという形のようです。スクールは教官にとっての置屋さんみたいなものですな。

さて、説明を聞いた際に、今日中に体験搭乗も出来るよ、との事だったので、思わず30分の体験搭乗を申し込みました。30分の体験搭乗と言っても、その前後のインストラクションが付いています。まずは、C172の飛行前点検から。最初に機内に入って、基本的な計器の説明。と言っても、体験用は最新鋭の機材で、正面にはGarmin社製のG1000の大型液晶画面が鎮座しています。それ以外のマスタースイッチや灯火類の説明を受け、機外の点検へ。確認した事を記憶を頼りにまとめると、次のような内容でした。

左胴体(コクピット外部)の点検
  • スタティックポートの状態は正常か

左翼の点検
  • ピトーの状態は正常か
  • 翼の全面の形状が正常か
  • フラップ(下ろした状態)で異常は無いか、操舵用のロッドにわずかな遊びがあるか
  • エルロンのヒンジに異常が無いか、操舵用のロッドにわずかな遊びがあるか 
  • 航法灯とストロボは正常に作動しているか
左胴体の確認
  • 胴体にへこみなどはないか
尾翼部の確認
  • エレベータの翼の形状、ヒンジ、操舵用ロッドの確認(エルロンと同様)
  • ラダーの翼の形状の確認
  • 航法灯は正常に作動しているか
右胴体の確認
  • 胴体にへこみなどはないか
  • 緊急位置通報用のビーコンのアンテナは正常か
右翼の確認
  • 左翼の確認と同内容
エンジン・プロペラの確認
  • 翼のブレードにクラック等はないか
  • インテーク内に異物はないか
燃料等の確認
  • 燃料の量を両翼上部の給油口を開いて確認
  • 両翼下部各5か所にある燃料確認口に燃料チェッカーを入れてサンプル採取(水等の混入確認)
  • エンジン右側ハッチを開いて、オイルの確認(量、汚れなど)
この時は、オイルが若干少ない(6:単位は?)という事で、(2単位)補給しました。ミニマムはと聞くと、「2単位だが、いつも最大限入れておく方が安心だ」との事でした。これに限らず、「車と違って、何かあっても止まって確認が出来ないから、出発前に出来る限りの確認をするんだ」という説明が印象的でした。

機内に戻ってからは、チェックリストにしたがってエンジン始動前の点検を行い(手順はあまり覚えていません。バッテリーのチェックその他をやりました) 、やがて教官が窓から顔を突き出したかと思うと、かなりの大声で「クリアー」と叫び、エンジン点火。私が機長席(左席)に座っているので、こうした手順は指示されて自分の手で行います。車のエンジンと同じ感じで、あっさりと回転開始。その後もチェックリストにしたがって若干の点検を行った後、「ランナップフィールドで次の点検をする」との事でいざ移動。

セスナのタクシーですが、初めての印象はかなり難しいものでした。つい操縦竿でエルロンを動かしてしまいますが、正解は足でのラダー操作。ペダルはラダーとブレーキの両機能がついていますが、これがなかなかうまくいきません。教官が横で補正してくれていることもあってか、自分の分でいる感覚とは違うように進んでいきます。これは難しい。

滑走路わきのランナップフィールドでは、エンジンの回転を高めたりして、またもやチェックリストにしたがって点検を進めます。これは、チェックリストを入手してじっくり見ておかないと、手順がおぼつかないような気がします。やがてチェックが終わると、その場で360度回転して、周辺を飛行している飛行機の状況を確認。首を回すより確実なのですね。最終進入中のセスナ機があったので、一応教官に報告(とっくに気が付いていたとは思いますが)。その機が到着後、教官が無線で滑走路進入を報告した後、滑走路へ。「Let's Go」とひとこと言われました。

その前に、「55ノットになったら徐々に操縦竿を引いて、60ノットを超えたらさらに引いて」 との事だったので、それにしたがいました。感慨を味わう間もなく離陸。地面が遠ざかっていきます。意外だったのは、意外と機種が上がっている感覚があること。セスナでもこんなに上を向くんだという印象でした。離陸後すぐに上下左右に揺すられました。「今日は風が吹いている」との事でしたが、正直、少し怖いほど。こんな風の中を自分の操縦で飛ばすことが出来るのか、不安がよぎりました。

地上500フィートに達したら左90度旋回してクロスウィンドに入れと、これも出発前に説明がありましたので、この辺かなと勝手に判断して旋回開始。何度まで傾けて良いか、などの細かい話は全くなかったので、25度程度にしてみました。特に何も言われず。やがて、「左に90度旋回して、フリーウェイの上を飛べ」との事で、それにしたがいます。そのころには乱気流もおさまり、揺れもなくなってきました。

「はじめて飛んだ感想はどう」と聞かれますが、あまり感慨もありません。こういう時は、大げさに喜んだ方が良いとは頭で思うのですが、離陸直後に揺れて不安だったのもあり、そっけなく「I'm flying」と答えたのみ。これが、飛行中の頭は、地上の6割しか働かないという事かと、よぎりました。英語を使う時点で、日本語の頭の6割程度、さらに空中で6割というと、本来の36%しか頭が働いていない事になりますが、まさにそのくらい頭が回らない感覚でした。唖然としているように見えた事でしょう。

そのまま上昇を続けろと言われたのですが、上昇の姿勢や速度などについての説明は一切なし。なので、「速度はいかほどでしょうか」と尋ねると、78ノットとのこと(この数字、記憶が曖昧です)。操縦竿を押し引きして、出来るだけその速度を保つようにします。やがて、「正面の湖が見えるか」と聞かれたので、「Yes」と返答。「そこが訓練空域だ。そちらにヘディングを向けてくれ」というので、若干右に舵を切ります。こう書くといかにも自分が操縦しているようですが、まったくの適当で操縦するのみ。教官が細かく修正を入れてくれていたのでしょう。ここで気がついたのは、上昇中の真正面は後傾姿勢であること、飛行機の鼻(エンジン部分)が邪魔で殆ど見えません。本当はいけないのでしょうが、湖が見えないという事は、正面にあるはずと思い、そのまま飛ばしていきます。確か高度は4000フィート程に上昇していたはずです。

湖が間近になると教官が、「胃は大丈夫か」と尋ねてきました。何となく察しはつきましたが、「大丈夫」と答えると、教官は操縦竿をいきおい良く前に倒し切りました。遊園地の垂直落下系の乗り物に乗ったようなマイナスGの感覚と、目前に広がる地上の光景。横では、ニヤッと笑う教官。絶叫系の乗り物が大の苦手な私にとって、離陸後に引き続いて「こんなことは無理かもしれない」と思う瞬間でした。教官に「こんな事もトレーニングではしないといけないのか」と尋ねると、「トレーニングではこんなことはない。もうやらないよ」と言うので安心はしましたが、本当でしょうか。失速訓練ってこんな感じなのでは、と憂鬱な気分に。

その後、湖上空に到達して、旋回してご覧というので、旋回をしたり。「スティープターン」というのはこうやるんだと言って、横に45度傾けた旋回を始める教官。自分の側(左側)が下なので、左の窓からはやはり地面が。多少怖かったですが、先ほどのマイナスG程ではなく。今回の怖さの原因は、もしドアが開いたら怖いだろうなあ、という感じのもの。嫌なので、「僕もやってみる」といって、逆のスティープターンをしてみました。エルロンとラダーの合わせ方も教わってなかったので、「両方バランスを取らないといけないんでしょう」と聞くと、「その通り」と一言。どのようにとは教えてくれなかったので、適当に足を添えつつ回転してみたり。「うまいうまい」との教官の言葉に、気持ちをくなったり。

そんな事を5分ほどしていると、「もう時間だから戻る」とのこと。「あの山の稜線が地面に降りる場所を目指せ」とのことで、そちらに向けて帰路へ。やがて、これから降下するという事で、スロットルを絞り(スロットルは全て教官が操作していました)、徐々に降下へ。その途中、教官は場を和ませようと思ったのか、日本からか、自分の知っている日本語は、などといろいろ語りかけてくれますが、離陸直後からの36%脳のままなので、的確な返答は全くできず。「You know Japanese Well」などと中学生並みのリアクションをしながら、やがてトラフィックパターンへ。

また風が強く、大きくゆすぶられながら、フラップを指示に従って降ろして行きました。ベース、ファイナルと入り、そろそろ操縦竿から手を離してと言われることを期待しつつも、結局着地まで言われず。何となく気持ち操縦している気になりながら、着地へ(もちろん、実際は教官が操縦していたのでしょう)。ブレーキをかけろというので、このタクシーウェイから出れるかと思って強めに踏むと、「次の出口で出よう」とのことで、ブレーキから足をはなしたり。やはりブレーキ、車輪の動きは難しい。

滑走路を出てからも、ヨタヨタと走っては教官に修正(というか、自分では全く直進できず)されながら、何とか駐機場へ帰還。エンジンを切り、駐機位置へと教官と二人でプッシュバックさせ、係留用に両翼(支持棒みたいなのが出ている付け根)2か所と尾翼下1か所の計3か所をチェーンで地面とつないで終了しました。

気になったのは、貸してもらったヘッドセットがマイクを唇に付けるくらいにしないと音を拾ってもらえないこと(一定以上の入感時のみインターコムがオンになるようです)、このマイクの位置決めが難しいことでした。これは、自分専用のものを買った方が良い気が。

教官に、「楽しかっただろ」と言われ、6割脳に戻りつつある頭で「I am so nervous」と答えると、wasだろと訂正されました。いや、まだ緊張してるのですがと思いながら、「Yes, I was」と適当に調子を合わせ、さらに、「これは興奮した、すごい経験した」と、こんなことを言ったら喜ばれるかというような内容を口にしてみました。自分でも冷静なのか、浮ついているのか、全く分からない状態でした。