飛行前点検

訓練に限らず、飛行機を運航する前には「飛行前点検(Before Flight Inspection)」を行ないます。最初は教官が方法について教えてくれますが、やがて訓練生が自分で行なうようになります。これもPIC(機長)としての作業の一環な訳です。

具体的なチェック項目は各機体のマニュアルに記載されていますが、大まかに、
  1. 灯火類及びピトーヒートの確認
  2. 機体外部の点検
  3. 燃料の確認
  4. エンジンの点検
に分けることが出来ます。

1.灯火類及びピトーヒートの確認
まず、マスタースイッチを入れ、灯火類とピトーヒートを点灯し、フラップを展開します。その後機体外周をまわって、各灯火が正常に点灯・点滅していることを確認します。またピトーを触って、温かくなっていることを確認します。いつまでも付けているとバッテリーがあがってしまいますので、各スイッチを切ってマスタースイッチをオフにします。フラップは外部点検のため、展開したままにしておきます。
ピトー管
2.機体外部の点検
機体外部の点検をします。基本的にリベットのヌケがないか、亀裂が入っていないか、ねじの抜けが無いかを確認します。また、翼はリーディングエッジ、トレイリングエッジを特に確認します。エルロン、ラダー等の可動部分はヒンジのボルトなどを確認し、さらにロッドは遊びがあることを確認します。タイダウンしてある場合は、それらの鎖もこの点検中に解きます。
エルロンのヒンジと作動ロッド
フラップ
タイダウン
また、各タイヤも確認します。タイヤは空気圧があるか、傷がないか、ブレーキオイルが漏れていないかなどをチェックします。
プロペラも、傷や亀裂がないことを確認します。プロペラは重要部品ですので、飛行機を動かす時に、押したり引いたりしても大丈夫なほどの強度があります。
さらに大事な部品として、ピトーとスタティックポートがあります。これらは、速度計、高度計などの作動に必要なもので、どちらも小さい穴が開いています。これらがふさがれていないか、確認しておきます。
まるい部品の中心にあるのがスタティックポート
3.燃料の確認
量の確認
両主翼の上にある給油キャップを開けて、燃料測定棒(Fuel Dip Stick)を入れて量を確認します。ストロー状のStickをタンクの底まで入れ、スポイトの原理で指で上の穴押さえて持ち上げ、棒に刻まれた目盛で読み取ります。当然(タンクの深さなどが異なるので)、機種ごとに専用のStickを使用します。
 
質の確認
主翼下部にある燃料サンプル取得用の穴にチェッカー(Sampler Cup)を挿しサンプルを採取して、質を確認します。燃料にはグレードに応じて色が付いています(一般的なAVGAS100LLの場合はうすい青色です)。特に、水の混入がないことを注意して確認します。水が入っていると、下に水玉が出来ます。混入が見つかった場合は、無くなるまでサンプリングを続けます。
100LLは青色が付いています
4.エンジンの点検
エンジンの点検口を開け、エンジンオイルの量を確認します。方法は車のオイルの確認と全く同じですが、確認棒には、1クォートずつ刻みが入っています。量が少ない場合は、0.5クォート単位(473ml)で足します。またC150の場合は点検口の中に燃料排出弁があるので、これを引いて燃料を排出させ、地面に落ちた燃料を目視で点検します(水の混入がないことを確認)。
右の黄色のキャップがオイル点検口
上記の点検の順序ですが、1をはじめにやった後、2~4は合わせて行います。外部点検では、私のスクールの場合は、機体のカーゴルームに備え付けてあるFuel Dip Stick、Sampler Cup、ペーパータオルを持って確認点検をします。
カーゴルームに必要なものがバケツに入っています
 スクールや機体によって点検方法は異なるのでしょうが、飛び立つ前にPICが責任を持って機体全般の最終チェックを行なうのは、同じなはずです。いくら整備士が点検していると言っても、自分の身を守るのは自分だけですから。

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