2011年1月31日

チェックライド前半戦[チェックライド1]

今朝はチェックライドです。前日のうちに、想定される交信を全て書き出し、それをElianにメールで送って確認をしてもらい、自分でも読み合わせて頭に入れました。知識問題は、Oral Exam Guideと日本語で説明のある諸サイトを参考にしましたが、何となく眺めただけでした。それよりも、明日訪問する各空港のチャートやデータをSkyvector.comで印刷し、さらに要求されているKCNO(Chino)-KHND(Las Vegas Henderson)のナブログを作りました。これは、風のファクターを入れて修正しなければいけないので、最終的には今日の早朝にプリントアウトしました。我ながら、Excelで自動計算するシステムは便利です。その根拠となったWind Aloftのデータも最新版をプリントアウトしておきます。
Chino空港に到着
スクールに着いたら、まずはElianと最後の書類チェックです。また、ナブログ上の各地点、Alternate、実際にエアワークをするRialto空港など、各地のMETARもプリントアウトしておきます。Chinoから試験開始になるので、点検をしてから、Chinoに移動します。今日の試験は、GabrielというLorneの学生も一緒です。彼らはC172に乗って、Elianと私はいつものC150に乗って、続けて離陸します。先行するC172の後を追って、ChinoのRight Baseから26Lに降りていきます。少しショックはありますが、まあOKなレベルの着陸でした。

P Taxiwayで滑走路を出て、グラウンドにコンタクトします。どこに行くのか聞いていなかったのでElianに聞くと、Thresholdと言います。それって、滑走路端のことではと思うのですが、良く聞くとThreshold Aviationという名前の会社のランプでした。こういう打ち合わせ、最初にしておいてくれないかなあと思いますが、逆に聞いていなかった自分の準備不足でもあります。

会社の格納庫前に到着して、エンジンを切ります。かなり大きな会社のようで、ビジネスジェットが格納庫に5,6機止まっています。この格納庫は連棟になっていて、3棟全てがこの会社のものとの事でした。1つの棟には双発機が、さらに別の棟にはビジネスジェットと、驚くことにジェット戦闘機が7機も止まっていました。この戦闘機が、先日Elianが乗った30分$1500のものだそうです。これは、かなりの規模です。
チェコ製L39ジェット練習機(レンタル料30分$1500)
各格納庫の間は事務棟になってます。ビジネスジェットのオペレーション会社だけあって、メインロビーは豪華な作りになっており、パイロットラウンジも皮張りのカウチチェアーや高級オフィス仕様のディスパッチルームになっています。さらに、奥には社長の趣味の部屋があり、中にはミッドセンチュリーの車が3台ほど展示されていました。壁には、同じ時代の看板が飾られており、古き良き時代のアメリカの少年の夢を形にしたような装飾です。裏手の事務所に案内されると、一番奥に副社長(奥さん)室、CEO室、会議室が並んでいます。これらは天井に波型の途端を山型に貼り付け、わざと格納庫の中の装飾にしています。イメージとしては、第二次世界大戦中の太平洋の島にある米軍基地のオフィスといった感じでしょうか。ワイルドでありながら、洗練された作りになっています。
凝った作りの社長室
驚いたことに、この会社のCEOが、今日のエクザミナーなのでした。CEOは空軍出身だそうで、その後ここまでの大会社を作り上げたそうです。本当に空と飛行機が好きなようで、CEOでありながら試験監督として、セスナ機でチェックライドもしているとのこと。これらの説明は、すべてElianによるもので、当の本人はまだ到着していません。4人でCEOの到着を待ちます。Elian以外は初めてなので、あまりの豪華さに少し度肝を抜かれています。何だか試験の前に、驚くことがあるのは良くない気がします(笑)。Lorneにこういう会社はアメリカだと、いくつもあるのか、と尋ねると、こんな大きな会社はあまりないだろうとのこと。

やがて到着したCEO(Markさん)と挨拶して、まずは会議室で談笑が始まります。「Collation、これを今日のテーマにしよう。失敗から学ぶ、知らなかったことから学ぶ、それが大事だ」。談笑しながらも、この試験官は鋭いことを言ってきます。「自分は決してトリッキーなことを聞いたりはしない。知らないことがあっても良い。何よりも大事なのは、知らなかったことを知ること。物事の理由を知ること。」「この2人のインストラクター達だって、知らない事はある。まして、今日試験を受ける2人は経験が少ないから、知らない事が多いだろう。それをどうやって知っていくかが大事だ。」
オーラル試験を受けた会議室
しかし、このMarkさん、雑談と試験の間を行ったり来たりするので、気が抜けません。「この間Riversideの空域からChinoの空域に入る時、忙し過ぎて周波数変更許可もくれないし、Chinoに引き継いでもくれないしで困ったよ。全くあの管制官にも困ったもんだ。さて、君たちだったらそういう場合にどうする?」といった具合です。この質問は、私は「とりあえずどちらの空域からも出てChinoに再度入域許可を求めます」、Gabrielは「Riversideの空域で360度旋回をします」。Markの答えは、「どちらも良いが自分だったら、Riversideの空域内でChinoにコンタクトを取る。Riversideはもう去るのだから、管制官も興味がないだろう。それよりも自分の次の行き先に注意を向けるべきだ」。これは、決して14CFR(米国航空法)にも書いていないことですが、こういう判断が求められるということなのでしょう。

他にも、君らの乗る飛行機の燃料系統を絵に描いてくれ、電力系統で、アビオニクス、ライト、モーター、ヒーターを電力を食う順番に並び変えろ、またどうやって調べたら良いと思うか、だの変わった質問が多く出ました。電力系統に関しては、モーター(セルモーター)、ライト、ヒーター、アビオニクスの順、消費(電流)はそれぞれの機械のサーキットブレーカーやヒューズの容量で推測できる、といった教科書からもElianからも習うことのなかった答えでした。
私が書いた燃料系統図・・・
もちろん離陸重量や搭載燃料、空域といったオーソドックスな質問もありましたが、ためになったのは、Class B、Cは250ノットで、Class Cの下部、Class Dの200ノットという速度制限の理由(答えは、大型機は200ノット以下にはあまりしたくない、速度を遅くするのは管制官に判断の時間的猶予を与えるため)、またV2、VRef(進入速度)、Best Glideは同じ速度であること。なぜならば、その速度が相対的に最も揚力を得られるから(Best Lift over Drag)等の理由をつけての説明でした。

これらを、インストラクターも合わせて雑談形式で行いました。誰かが答えると、「他の皆も彼の意見に同意か」、3人「I agree」という感じで進んでいきます。後で、スクールに戻って他のスタッフらにも聞いたところ、やはりずいぶんとイレギュラーなオーラル試験だったようです。
ビジネスジェットの並ぶ格納庫
こんなオーラルをひとしきりやった後で、われわれ受験者2名の書類を確認となりました。私は特に問題なく終了。Gabrielの分は、Lorneが作った書類を置いて来てしまったとのことで、この会社のPCからプリントアウトし直しました。こういう時もネットベースで処理が出来るのは便利です。

ところが、いざ実技試験という準備がととなったところで、みんなで最新の天候を取ると、かなり悪化して雨まで降り出しています。皆で外に出てみますが、当たり前ですが、気象通報と同じです。MVFR状態ということで、順番にトラフィックパターンでノーマル、ショートフィールド、ソフトフィールドの離着陸をChino空港で行いつつ天候の回復具合を見て、その後を判断しようということになりました。

「最初に飛ぶのはどっちだ」とMarkが聞くと、Gabrielがすかさず、「僕が」。ということで私は2番手となりました。「戻ってきたらすぐに飛ぶから。すぐ行けるようにシートベルトもして待っておくように(笑)」。そう言って、MarkとGabrielが出発していきました。私は雨の中、飛行前点検を行ない、言われたとおりにシートベルトをして座り、手順を頭の中でおさらいしました。また、すぐに出発できるよう、自前のエアバンドでATISを流し続け、最新のものを記録しておきます。雨と視界はさらに落ちていきます。先発機は思ったより長いこと飛んでいるようです。30分ほどした頃、ようやく帰ってきました。
整備中のビジネスジェット(チャレンジャー)
こちらの機のドアを開けて、Markを「Welcome Sir」と迎え入れます。早速チェックリストにしたがってエンジンをかけ、出発します。Markに、どのタイミングでGroundにコンタクトすべきか聞くと、Ramp(会社敷地)の出口とのこと。それに従います。Rwy26Lまでのタキシング許可をもらい、プリントアウトしておいたChinoの空港チャートで確認して出発します。この確認は非常に良いとほめられました。滑走路手前で誘導路中心線を外れて止まり、ランナップを実施。ホールドショートラインまで進んで、タワーにコンタクト。そのまま離陸許可が出たので、滑走理に入ってまずはノーマルテイクオフ。
雨の中での離陸は初めてでしたが、特に問題は無し。気温が低いせいか、2人乗っていても、上昇能力はなかなかあります。パターンをまわって、ダウンウインドでCleared for Optionの許可が。復唱した後で、Markにショートフィールドか尋ねると、「最初はノーマル。いつもノーマルから始めるのが良い」とのこと。多少低めのアプローチとなり、ショートファイナルでRPMを高めにしましたが、問題なく着地。スムースとまでは行きませんが、まあOKでしょう。

そのまま滑走路上で一度停止して、ショートフィールドテイクオフとの指示。これは問題なくこなします。次はショートフィールドでの着陸。あまり得意ではないのですが、今日は意外と落ち着いており、何よりも雨のせいかサーマルが無いため、気持ちの良いくらい操縦の反応が分かります。最後少し着地が伸びてしまいましたが、これもOKな範囲。そのままソフトフィールドとのことで、フラップ10度でウィリー、離陸、ノーズダウン、速度上昇、ノーズアップ、上昇と問題なくこなせました。

最後は、ソフトフィールドランディングです。これも苦手(つまり着陸全般が苦手)ですが、狙っていきます。最後の最後でMarkが「スロットル」とコール。Elianとの時はやっていなかったのですが、着陸直前に若干パワーを入れて、ソフトに降りるべきようです。また着地後もしばらくパワーを残して、ウィリーをしたまま、じわじわと減速。「ソフトフィールドは滑走路の制約はないのだから、好きなだけ距離を使ってゆっくりと降りるべき」とのこと。

滑走路を出た後は、タクシー中に「寿司は好きか」から始まる世間話をしばし。今日のテーマにしたがおうと思い、最後にソフトフィールドでのパワーの入れ方について、タイミングとパワーの量を質問してみました。着陸直前に200rpmほど入れると良いとのこと。

こうした話をしているうちに、駐機場へ。「なかなか良かった」とのコメントをもらいました。会社の会議室に戻ると、Elianが買い出しに行っていたハンバーガーがありました。Markと私以外は食べ終わっていたので、2人だけ食べながら、また世間話。食べ終わった頃にMarkが、「先ほどのコメントを」。基本的には、2人とも良かったが、Gabrielはチェックリストをしっかり使うこと、ホールドショートラインは余裕を持って手前で停止すること。私に対しては、
  1. 離陸許可が出た時も、周囲のトラフィックに十分に注意を払うこと。管制官を信頼しすぎないこと。
  2. Soft Fieldは滑走路をどれだけ使っても良いので、出来る限りソフトに
また、2人とも、着陸直前のエンジンアイドル後は、ラダーでセンターを維持するように。二人ともラダーの使いが弱い。とのことでした。

天候は、さらに悪くIFR状態になってしまいました。チェックライドを続けることは出来ません。天候の回復次第で、明日に続きをしようということになりました。その後、またひとしきり雑談となりましたが、終わる気配がありません。理由をLorneに聞くと、IFR状態なので現時点ではCoronaに飛べないとのこと。C172はIFRの装備がありますが、それでも厳しい状況とのこと。Coronaが計器進入の条件を下回っているそうです。1時間ほど待ったところであきらめ、スクールに迎えの車を依頼。さらに30分ほど待って迎えが到着。ElianはまだMarkらと話をするのでChinoに残るとのことで、彼を除く3人で、Coronaに帰還となりました。
悪化する天候
なかなかの波乱含みでしたが、今日の感じであれば、後半戦も行けるのではという気がします。オーラル、離着陸が終わったので、残りはストールなどエアワークということになります。

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